モーラー奏法4 ~他のストロークセオリーとの違い~

前回までの解説で、モーラー奏法の長所と短所を紹介しました。
今回は、モーラー奏法と一般的なストロークセオリーの根本的な違いについて
書きたいと思います。

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【動き】
一番の違いとしては、モーション(動作)の違いがあります。
モーラーは腕全体を使い、鞭を振るうような動きをします。
まず、最初に腕の付け根、肩甲骨あたりから動き、肩、肘、手首というように、
腕の先端に向かう順番で振り上げ、一番最後にスティックのチップが動きます。
ストロークするときも、同じ順番で振り下ろしていきます。
かたや、グラッドストーン奏法に代表されるような一般的なストロークセオリーでは、
まず一番最初にチップを持ち上げ、手首、肘、肩というように、モーラー奏法とは逆の順番で
腕を振り上げていきます。振り下ろすときは肩、肘、手首と、振り上げるのとは
逆の順番で振り下ろします。(動画Ex-1)

【力を入れるポイント】
モーラー奏法などのナチュラルドラミングと呼ばれる奏法では、
スティックが打面に当たる(インパクトの)瞬間は手の力は抜けていた方が良いとされます。
これにより、打面のリバウンドが最大限利用できると共に、力を抜くことで
持久力も増します。
ただ、前回解説したように、音の粒をそろえることや、すごくゆっくりなフレーズは叩き辛いと
言えます。
一方、一般的なストロークセオリーにおけるダウンストロークは、インパクトの瞬間に
手を握りこみ(squeeze)、勢いを殺すことで次のストロークに繋げます。
なので、叩く瞬間がオープンなナチュラルドラミングに比べ、スティックや楽器の鳴りが
制限されます。最大音量は若干落ちますが、その分、整頓された粒立ちの良い音を
出すことができます。
故に、このダウンストロークはスタッカートストローク(staccato stroke)とも呼ばれます。
(動画Ex-2)

【まとめ】
モーラー奏法と一般的なストロークセオリーの違いは、大きく分けて以上の2点が
挙げられます。
しかし結局のところ、人間の体の動きを利用している奏法なので、
モーラー奏法を習ったり意識したことがない人でも、叩き方がモーラーモーションに
なっている人もいます。大きい音を出そうとか速く叩こうとすれば自然とそうなるのです。
僕の知っている話だと、10年ほど前だったか、Omar Hakimがクリニックで、
「あなたのシンバルの叩き方はモーラー奏法だと思うのですが…」という質問に対し、
オマーは「特別な奏法は使ってないよ。普通に叩いているだけ。」と答えていました。
他にも、最近のラウド系ドラマーなんかは、みんなモーラー的なモーションで叩いてますよね。
それも、多くは大きく速く叩いているうちに体が最適化されてきた結果なんだと思います。

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